
日常に、香りのあるお茶を
暑い日が続くと、つい冷たい水出しのお茶ばかりに手が伸びてしまいます🧊
わたしも最近は、手軽に飲める市販のティーバッグやペットボトルのお茶に頼ることが増えてきました。
でもふと、「あの香り、久しぶりに感じたいな」と思う瞬間があります。
それは、奄美のお茶の香り🌿
奄美大島には、昔から親しまれている個性的なお茶がいくつかあります。
今回はその中から、香りが印象的な3つ──月桃茶、グァバ茶、くび木茶をご紹介します。
月桃茶:すっきりと華やかな香りが心地よい
まずご紹介したいのは、月桃(サンニン)の葉を乾燥させて作るお茶です。
このお茶は、ショウガのようなすっきりとした香りが特徴。
すーっと鼻に抜けるような、でもどこかやさしさのある香りです。
香りは強すぎず、味もクセがないため、初めての方でもとても飲みやすいお茶だと思います。
島では、お餅を包んだり、虫よけに使ったりと、日常の暮らしに欠かせない植物。
そんな月桃の“香りだけ”をお茶として味わえるのは、とても贅沢なことだなと感じます。
夜の読書の時間や、ちょっと一息つきたいときにおすすめです。
リラックスしたいときには、ホットで飲むと香りがよりふわっと立ち上がります。
グァバ茶(ばんしろう茶):個性が際立つ、好き嫌いが分かれる味
続いてご紹介するのは、グァバの葉から作られる「ばんしろう茶」。
果実ではなく、主に葉を使って作られるため、香りや味わいに独特のクセがあります。
どこか青くささがあり、香ばしさと渋みも強め。
ウーロン茶を濃くしたような感触です🍵
個人的には、初めて飲んだとき「これはちょっとクセがあるな…」と思ったのが正直な感想です。
でも不思議と、何度か飲むうちにクセになる人もいるんですよね。
奄美では昔から親しまれていて、「おばあちゃんがよく煮出してたなあ」という声も聞きます。
私は、アイスティーにして飲むと飲みやすくなると感じています。
香りを楽しむというよりは、「島の暮らしを思い出す味」といった存在かもしれません。
くび木茶:木の香りを感じる、あっさりとした一杯
最後は少しマニアックなお茶、「くび木茶」。
“くび木”というのは、奄美に自生する樹木の名前です。
くび木茶はその樹皮を乾燥させて作られたお茶で、
ひと口含むと、まるで木の香りをかすかに感じるような、落ち着いた印象があります🌲
でも味わいは意外にも軽くてあっさり。渋みも少なく、するすると飲めてしまいます。
「木の香り」と聞くとクセがありそうに思えますが、意外とすっきりしていて、
私は気分を切り替えたいときや、外から帰ってきてホッとしたいときによく選んでいました。
お茶は、香りとともに文化を伝えるもの
お茶には「◯◯に効く」といった話題がつきものですが、
薬剤師としては、そうした健康効果ばかりがひとり歩きしてしまうことに、少し慎重な気持ちもあります。
でも、お茶の香りや味わい、その背後にある人の暮らしや土地の文化には、確かに大切な“効き目”があると私は感じています。
例えば:
- 月桃の香りで、深呼吸がひとつできたこと
- グァバ茶を飲んで、おばあちゃんの笑顔を思い出したこと
- くび木茶で、日常のスイッチをゆっくり切り替えられたこと
そうした感覚が、何より心の滋養になるのではないでしょうか。
さいごに
最近はついつい、水出しの手軽なお茶ばかり選びがちな私ですが、
久しぶりに月桃の香りを感じたとき、ふと時間がゆっくり流れるような気がしました。
お茶は香りとともにある“静かな旅”のようなもの。
あなたの暮らしにも、奄美のお茶がそっと寄り添ってくれたらうれしいです。
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<香彩代表・カモガワ>
愛媛生まれ・愛媛育ちの薬剤師。
旅行で奄美大島を訪れた際、その開放的な空気や青い海に惹かれ、2018年に移住しました。
移住後、ふとしたきっかけからアロマセラピーに興味を持ち、独学で学び始めました。
そんな中、奄美で出会った方から「奄美のアロマってないのよね」という言葉を耳にし、
2020年アロマ製造をスタート。
いくつかの季節を経験する中で、奄美大島の多種多様な植物たちと出会い、
「植物は“薬のお母さん”でもある」と気づきました。
薬剤師として学んできた知識と、化学好きの個性を活かしながら、『えがおのくすり』として
奄美の香りを作り、届けています。
この活動が、移住者である私を温かく迎えてくれた奄美の人々や自然への、
ささやかな恩返しにつながればと願っています。
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