100本のアロマを、捨てました

100本以上のアロマを、捨てたことがあります。

正確には、手元にあった精油や香りの素材を、ほとんど処分しました。

香りが嫌いになったわけではありません。

むしろ、香りを選び、組み立てる時間は好きでした。
だからこそ、処分すると決めたときには、自分でも少し迷いました。

目次

香彩のかたわらで、こっそり調香していました

奄美で薬剤師として働きながら、香彩を始めた頃のことです。

島の植物から香りを取り出す仕事と並行して、私はこっそり調香もしていました。

調香とは、複数の精油や香りの素材を組み合わせ、ひとつの香りを設計することです。

同じ素材を使っても、組み合わせ方で印象は変わります。
明るさが前に出ることもあれば、奥行きのある静かな香りになることもあります。

瓶のふたを開けて、ひとつずつ香りを確かめる。
少し合わせては立ち止まり、また考える。

薬剤師として成分を見る時間とは、また違う作業でした。

香彩の仕事では、奄美の植物が持つ香りを、どう取り出すか考えます。

一方、調香では、すでにある香りをどう重ねるか考えます。

ひとつの植物と向き合うこと。
いくつもの香りを組み合わせること。
似ているようで、頭の使い方はまったく違いました。

どちらにも正解はひとつではありません。
香りを確かめながら、自分の感覚と言葉を行き来する時間が続きます。

「私やお店のための香りを」と頼まれると

調香をしていることを知った方から、声をかけられるようになりました。

「私のための香りを作ってほしい」
「お店に合う香りを作ってほしい」

そう言われると、私はなかなか断れませんでした。

どんな場所で使うのか。どんな空気を大切にしているのか。
好きな香りと、苦手な香りは何か。

一人ひとりの話を聞きながら、その人や場所に合う香りを考えていきます。

言葉になったものだけでなく、話しているときの表情や、選ばなかった香りも手がかりになります。

「この人には、どんな香りが似合うだろう」

希望する香りが、最初から言葉になっているとは限りません。

話を聞いているうちに、大切にしたい景色や、その人らしい輪郭が少しずつ見えてきます。

それを香りに置き換えていく過程は、単に好きな精油を選ぶこととは違いました。

机の上に小さな瓶を並べて考える時間が、実は好きでした😊

気づけば、100本を超えていました

依頼に向き合うたび、必要になる香りは少しずつ増えていきました。

軽い香り。深い香り。
全体をつなぐ香り。
ほんの少し加えるだけで、印象を変える香り。

棚には小さな瓶が並び、引き出しの中にも精油やアロマが増えていきました。

一本ずつには、それを選んだ理由があります。誰かの話を聞き、考え、香りを組み立てた時間も残っていました。

いつの間にか、その数は100本を超えていました。

小さな瓶でも、100本を超えると棚の景色は変わります。

ラベルを見れば、香りの名前だけでなく、その瓶を必要としたときのことまで思い出せました。

2年前、きっぱりとやめました

その調香を、私は2年前にやめました。

少しずつ減らしたのではありません。
続けないと決め、手元にあった精油やアロマのほとんどを処分しました。

処分する前に、棚や引き出しから瓶を一本ずつ出しました。

並べてみると、こんなに持っていたのかと、自分でも驚きました。

「もったいない」

何度もそう思いました。

香りの瓶を手に取ると、使っていた場面や、誰かと交わした言葉まで思い出します。

処分したのは物だけではなく、そこに積み重なった時間でもあるように感じました。

それでも、残しておくという選択はしませんでした。

手放したあとに残ったもの

瓶がなくなった棚には、何もない空間ができました。

長く見慣れていた景色が変わり、最初は少し落ち着きませんでした。

けれど、手放してみると、思っていたよりも身軽でした。

香りが嫌いになったわけでも、調香していた時間を否定したいわけでもありません。

好きだったことでも、手放すときがある。

今は、そんなふうに思っています。

なぜ、好きだった調香をやめると決めたのか。

その理由は、また別の話として、いつか綴りたいと思います😊


<香彩代表・カモガワ>

薬剤師として奄美大島に暮らしながら、島の植物の香りを”えがおのくすり”として届けています。
青い海と風の中で出会った植物たちの香りを通して、奄美の優しさと彩りを全国へ。

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