奄美のマンゴーが、今年は出荷できなかった——価値で選ばれる産地へ

奄美 海 自然

「今年は、マンゴーを出荷できません」

2026年、1件の奄美のマンゴー農家さんから、そんなお知らせがありました。

日照りなどの影響で、今年は出荷できない。お知らせに書かれていたのは、その事実でした。

いつも購入している農家さんではありません。
それなのに、思っていた以上にショックでした。

画面に並んだ短い言葉が、いつもより重く見えました。

前回の「100本のアロマを、捨てました」では、私が調香をやめ、手元の精油を処分した話を書きました。
今回は、自分で捨てた話ではありません。

ひとつの「出荷できない」という知らせから、島の果実と、その価値について考えた話です。

目次

「今年は出荷できない」という現実

マンゴーは、実る年には店頭や贈り物として目にします。
けれど、毎年同じように届くとは限りません。

今回のお知らせには、農家さんの名前や地域のことを詳しく書くつもりはありません。

ただ、日照りなどの影響で、出荷そのものを断念する年があった。
その事実は、島の外の出来事には思えませんでした。

奄美で果実を原料にする仕事をしている私にとって、同じ島で起きていることだからです。

作りたい気持ちがあっても、届けたい相手がいても、気候は人の予定どおりには動きません。

誰か一人の工夫だけでは、どうにもならない部分があります。

たんかんも、毎年同じではありません

これは、マンゴーだけの話ではありません。
香彩が扱っているたんかんも、年によって収穫量や品質が安定しないことがあります🍊

同じ奄美で育った果実でも、毎年同じ量が採れ、同じ状態で届くわけではありません。

果実を待ち、仕入れ、香りにしてきた中で、その違いを見てきました。

収穫量が少なければ、原料として使える量も限られます。
幸い、香りは中の果実と違い、果皮の質が大きく損なうことはありません。

しかし、お世話になっている農家さんたちの話を聞いてると、
『植物に全く同じ質の年はない』と感じます。

ひとつの農家さんのお知らせだけで、気候の変化をすべて語ることはできません。

けれど、マンゴーの知らせと、たんかんで見てきたことは、私の中で重なりました。

これまでと同じように作り、同じように届け続けることが、少しずつ難しくなっている。

気候が変わる中で、その現実から目をそらすことはできません。

「たくさん作って、安く売る」が難しくなる

収穫量も品質も、毎年同じではない。

その中で、「たくさん作って、安く売る」という形を続けることは、ますます難しくなります。

量が揃うことを前提にすれば、揃わなかった年の負担が大きくなります。

だからといって、島の果実の価値まで低いわけではありません。
たくさんあることと、価値があることは、同じではないからです。

安さが大切ではない、と言いたいわけでもありません。
日々の暮らしの中では、価格も大切な基準です。

ただ、安さだけで比べると、その年に少ししか採れなかった理由や、届くまでの背景が見えにくくなります。

少ないからこそ、伝えられる希少性があります。

果実そのものの質があります。

そして、どこで育ち、どんな状況を越えて届いたのかという背景があります。

安さではなく、価値で選ばれる産地へ

私は、奄美のものが安さだけで比べられない流れをつくりたいと思っています。

希少性や質、その背景まで含めて選ばれる。
「奄美のものだから欲しい」と思ってもらえる。

そんな産地になれば、量だけに頼らない届け方が少しずつ増えていくはずです。

出荷できなかった年のことも、なかったことにはしない。
出荷できない年があるということは、出荷できた年の果実も、当たり前ではないということです。

届かなかったという事実も含めて、島の果実が置かれている今を知ってもらう。

それも、背景を伝えることの一つだと思います。

香彩を育てることも、小さな一歩

香彩を育てることは、その流れをつくる小さな一歩です。

香りを通して、奄美の果実の希少性や質、その背景を伝えていく。
量が多いことではなく、その土地にあるものの価値を届けていく。

香彩だけで、島の農業を大きく変えられるとは思っていません。
それでも、ものの見方を少し変えることはできます。

奄美のものが、安さではなく価値で選ばれるために、私にできることを続ける。

「奄美の自然を、ひとしずくの香りに。」

この言葉に込めているのは、香りだけではありません。

毎年同じではない島の今も、そのまま伝えていきたいと思っています。

私たちは、何を基準に選ぶのだろう

手に取るものを、値段だけで選ぶのか。
それとも、希少性や質、そこにある背景まで含めて選ぶのか。

今年は届かなかったマンゴーのお知らせを見て、その問いが残りました。

答えは、一つではないと思います。

私自身も、香彩を育てながら考え続けます。


<香彩代表・カモガワ>

薬剤師として奄美大島に暮らしながら、島の植物の香りを”えがおのくすり”として届けています。
青い海と風の中で出会った植物たちの香りを通して、奄美の優しさと彩りを全国へ。

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