奄美・かくれ浜へ、今年も。おなじ浜がおなじ顔をしない理由

奄美 かくれ浜

そこに立てるのは、大潮の干潮のあいだだけ。

奄美の海には、限られた時間だけ、海のまんなかに砂浜が現れる場所があります。
「かくれ浜」と呼ばれる砂浜です。

潮が満ちてくると、白い砂はふたたび海の下へ隠れます。

奄美で姿を見せるのは、初夏の日中だけ。

かくれ浜は、ずっとそこに見えている砂浜ではありません。
大潮と干潮の時間が重なるあいだ、海のなかから、ほんの一時だけ見えてきます。

そして潮が動けば、景色もまた変わっていきます。
いつでも見られるわけではなく、見えているあいだも、ずっとその姿のままではありません。

そんな時間のなかにある浜へ、今年も行ってきました。

目次

奄美のかくれ浜に、はじめて立った日

はじめてかくれ浜に立ったのは、去年、2025年のことでした。
梅雨の晴れ間でした。

海のまんなかに現れた砂浜に立つ時間は、とても気持ちのよいものでした。

「来年も行こう」

そのとき、そう決めていました。

そして今年、2026年7月。
もう一度、かくれ浜へ行きました。

おなじ場所へ二度行くと、前に見た景色を思い出します。

けれど、今年のかくれ浜で目の前にあったのは、去年の記憶をそのまま重ねた景色ではありませんでした。

去年に決めた「来年も行こう」を、今年、実際にかなえることができました。

一年をへてもう一度立った浜には、今年の風と波がありました。
二度の風景を重ねると、おなじ場所にある、はっきりとちがう表情が見えてきます。

砂の白から、深い青へ

いちばん印象に残ったのは、島と海の境目に広がる色でした。

砂の白。
その先にある、うすい水色。

そしてエメラルドから、深い青へ。

ひとつの海のなかで、色が少しずつ変わっていきます。

「ここからが海」と一本の線を引けるような境目ではありません。
白と青のあいだに、いくつもの色が重なっています。

砂の白と、海の青。

言葉にすればふたつの色ですが、目の前の景色には、そのあいだがありました。

うすい色から濃い色へ、一気に切り替わるのではありません。
それぞれの色がとなり合いながら、ゆっくりと深くなっていきます。

おなじ場所を見ているのに、目を向ける先で海の色が変わる。

かくれ浜のまわりには、島と海がゆっくりつながっていくような景色がありました。

今年の奄美・かくれ浜には、風と波があった

去年のかくれ浜には、静かな空気がありました。

今年は、少し風がありました。
波も立っていました。

はじめて訪れた日の静けさとは、ちがう海です。

それでも、そこにいるあいだ、海の水を感じることができました。

静かな日だけが、かくれ浜らしいわけではない。
風があり、波が立つ日の海も、その日のかくれ浜です。

去年は、静かな空気のなかにあった浜。

今年は、風があり、波が立つ浜。

ふたつは、おなじかくれ浜でありながら、おなじ顔をしていませんでした。
そのちがいを、今年ははっきり見ることができました。

去年と今年。

場所はおなじでも、風も、波も、そこで見える色も、まったくおなじではありませんでした。

おなじ浜が、おなじ顔をしない

二度目のかくれ浜で気づいたのは、とてもシンプルなことでした。

おなじ浜なのに、去年とおなじ顔はしていない。

去年の景色が消えたわけでも、今年の景色が特別に正しいわけでもありません。
そのときの風と波のなかに、その日の表情がありました。

香彩が香りをつくるときも、
大切にしているのは、その年、その季節にしか生まれない表情を受け取ることです。

自然から生まれるものを、いつもおなじひとつの顔に決めることはできません。
かくれ浜で見た海も、そうでした。

「前とおなじではない」と気づいたとき、
ちがいを消して整えるのではなく、まず、そのとき目の前にあるものを見る。

香りづくりで大切にしてきたことと、二度目のかくれ浜で感じたことが、静かにつながりました。

去年の静けさ。

今年の風と波。

どちらも、わたしが実際に立った日のかくれ浜です。

今年の海として、心に残ったもの

奄美の海を、ひとつの「青」だけで覚えることはできません。
砂の白に近いうすい水色も、エメラルドも、その先の深い青も、すべてがその日の海でした。

そこに今年は、風と波が重なっていました。

潮が満ちれば、かくれ浜は海の下へ隠れます。
けれど、今年見た色と、そこで感じた海の水は、去年とはちがう景色として残っています。

おなじ場所を、前とおなじ景色に閉じ込めないこと。

二度目のかくれ浜で、自然はそのときにしかない表情を見せているのだと、あらためて気づきました。


<香彩代表・カモガワ>

薬剤師として奄美大島に暮らしながら、島の植物の香りを“えがおのくすり”として届けています。
青い海と風の中で出会った植物たちの香りを通して、奄美の優しさと彩りを全国へ。

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