たんかん畑で見た、香りを取り出す前の仕事
たんかんの木を見ながら話していると、農家さんが、小さな枝を切り落としていました。
葉のついていない、少し枯れた枝です。
理由を聞くと、そのまま残しておくと、枝が果実に触れて傷をつけてしまうのだそう。
実がなっていることは、見ればわかります。
でも、その実を傷つけないための手入れは、教えてもらうまで気づきませんでした。
先日、奄美大島のたんかん農園を見学させていただきました。
香りの原料として果実に触れるわたしにとって、その手前にある仕事を知る時間になりました。🍊
果実を守るために、小さな枝を切る
見学した広い農園を、普段はご夫婦で管理されていると聞きました。
収穫の際には、ほかの方に手伝ってもらったり、アルバイトをお願いしたりすることもあるそうです。
たくさんの木がある中で、果実に当たりそうな枝を見つけては切る。
見学中に見せてもらったのは、そのこまめな手入れでした。
果実の表面についた傷だけを見ても、そこに至るまでのことはわかりません。
傷をつけないために、すでに人の手がかかっている。その作業を、目の前で知りました。

香彩では、規格外の果実も精油の原料にしています。
「規格外」という言葉は、わたしも普段から使っています。
ただ、その言葉だけでは、育てる途中にかけられた手間までは伝わりません。
果実を選び、皮を扱う自分の仕事の前に、こうした作業があることを覚えておきたいと思いました。
植えた木が実をつけるまでの時間
新しく植えたたんかんの木が実をつけるまで、およそ3年。
農家さんは、ひとつの目安としてそう話していました。
その間も、木を育てる仕事は続きます。
でも、まだ実がならない木から、果実を売る収入は得られません。
目の前に実っているたんかんも、植えたその年に収穫できたものではない。
果実を手にするときには見えていなかった、年単位の時間がありました。
農業を始めるには、土地だけでなく、道具や機械、軽トラックなども必要になると聞きました。
新たに始める方には、その最初の負担も大きいのだそうです。
わたしが果実から精油を取り出す仕事は、原料が手元に届いてから始まります。
農家さんは、それよりずっと前から、実がなるまでの時間を引き受けているのですね。
手をかけても、同じ実りになるとは限らない
台風、日照り、大雨、気温。農家さんのお話には、自分たちでは変えられない条件が何度も出てきました。
前のシーズンは、日照りや雨の影響で、例年と比べて果実の出来がよくなかったそうです。
長く注文してくださるお客様には、その状態を説明したうえで、価格を下げて送ることもできると連絡されたと聞きました。それでも買ってくださる方がいる一方で、申し訳ない気持ちが強かった、と。
同じように仕事を続けていても、毎年同じものが収穫できるとは限らない。
果実を売るまでには、畑の管理に加えて、その年の出来をお客様に伝える仕事もあるのだと知りました。
原料を買う側のわたしには、安く買えるとありがたい、という気持ちもあります。
それは正直なところです。
けれど、今回聞いた話を思うと、仕入れ値だけで判断するのは十分ではないと感じます。
これからも作っていただけることを、自分の仕事と切り離さずに考えたいです。
果皮から香りを取り出す、わたしの仕事
香彩では、たんかんの果皮から、水蒸気蒸留で精油を取り出しています。
たんかんの香りは、「オレンジやみかんよりもジューシーで甘酸っぱさを感じる深い香り。ほんのりビター。」とお伝えしています。
その香りを取り出すには、まず果実が育ち、手元に届く必要があります。
わたしの作業だけで、ひと瓶の精油ができているわけではありません。
見学では、果実が育つ間に繰り返される手入れを知りました。
枝を切ることも、実がなるまで木を育てることも、手元の果実からは見えにくい仕事です。
香彩では、規格外の果実や、捨てられてしまう皮を原料にしています。
形や見た目によって生の果実としては選ばれにくくても、香りの原料として使えるものがある。
その使い道を、自分の手でつくっていきたいと思っています。
まずは、たんかんの香りそのものを好きになってもらえたらうれしいです。
そして、気になったときに、その香りがどんな果実から、どんな仕事を経て届いたのかも知っていただけたら。
今回の農園見学でお伝えしたかったのは、実のすぐそばにある、小さな枝を切る手でした。
<香彩代表・カモガワ>
薬剤師として奄美大島に暮らしながら、島の植物の香りを“えがおのくすり”として届けています。
青い海と風の中で出会った植物たちの香りを通して、奄美の優しさと彩りを全国へ。





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